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双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

復興住宅に一人で住む親戚の家に行ってきた。
親等でいうと遠縁になる人物なのだが、あたしは幼い頃からよく世話になっていた。痴呆が進んでいるとのことで、具合が悪いときは実の息子ですら誰だかわからなくなるということだったが、その日は良かったらしく、数年ぶりに会うあたしのことを覚えてくれていた。
部屋に入って、まず驚いたのが、掃除が隅々まで行き届いていたことである。どうやら自分でしているらしく、床はあたしの家よりもずっとピカピカだった。
ただ、自分で買ったもののことを覚えておらず、冷蔵庫の中にいっぱい要らんものがあるんや、と言われ、菓子やら飲み物やらを大量に持ち帰ることになった。正直、有難い。
20年前、あたしはまだ小学生だったので、よく覚えていないのだが、半壊した親戚の家に行ったことがあった。いくつかのタンスは、歪んで開かなくなってしまい、壊して中から必要最低限のものを持ってきたらしい。なので、雛人形やらアルバムやらは全て処分されてしまい、今思うともう少し引き揚げておくんだった、というようなことを言っていた。
親戚は今年、90歳。痴呆以前に、身体のあちこちが悪くなっており、敷地内に医者が揃っているこの復興住宅を、今さら出ることはできない。あたしだってその方が安心だし、このまま静かに暮らして欲しいと思う。親戚は市役所の愚痴をベラベラ言っており、こうして口が回る内はまだ大丈夫なのだと考えることができた。
親戚の趣味は、手芸やクロスワードなのだが、それを止めた途端に痴呆になったらしい。過去の作品が、いくつか残っており、あたしがそれを気に入ったのでもらい受けることになった。どれも、素晴らしい物だ。
その内、親戚はあたしのことを分からなくなるだろうし、亡くなってしまえば、この老人のことを覚えている人も少なくなってしまう。けれど、せめて残したものを大切にすることで、思い出すことはできるだろう。
寒いから見送りはいいと言ったのに、運動した方がいいからとロビーまで着いてきてくれた。曲がった小さな背中が消えていくのを見て、これが最後なのかもしれないと思いつつ、家事やら仕事のことを思い出し、急いで自分の家に帰った。