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sakiblog

双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

その駅で降りるのは初めてだった。
改札口を出てすぐに、小さな商店があり、そこでタバコを吸いながら数分待った。
普段はメガネで、休みの日はコンタクト、というのは、別に示し会わせたわけじゃないけど、彼もあたしも同じだった。私服を見るのは随分と久しぶりで、懐かしさからだろうか、妙にホッとした。
車にしなかったのは、ビールが飲みたかったからで、寒い寒いと言いながらも一缶ずつ買った。そして、点灯しているパネルから最も安上がりな番号を選んだ。
職業柄、仕事の話をしようとすると、物騒な専門用語が多い。隠語を使わなくても、そのまま会話できる密室は気楽だ。靴下を脱ぎ、ソファーで膝を抱えてビールをぐびぐび。彼はいつも、あたしより飲むのが遅いのだけれど、今日はなぜかすぐに飲み干していた。
そういえば、紹介してもらった後輩の女の子はどうしたの、と聞いてみた。仲間内での飲み会中、彼が半ば強制的に口説かさせられたクソビッチのことだ。面倒くさくてあれから連絡してない、と彼は笑った。可哀想に、あの子あんたに遊ばれるの楽しみにしてたんじゃないの、とあたしは彼を小突いた。
しょうもない奴ばかりだ、みんな。
随分髪が伸びたな、と彼は言った。君が女性の髪を触るのが好きだと言ったから伸ばしたんだ、とは言わなかった。
もうあれから一年以上。あたしは変わり、彼は変わっていない。
将来のことを話した。互いにどういうルートを辿ってこの職場を辞めていくのか。大きな会社だ、流されるままになるしかない。それでもほのかな希望はあるし、出来る限り楽に生きていきたいとは思っている。