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sakiblog

双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

結婚したから誘いにくくなった、と柳くんは言った。あたしだって、君が父親になるから飲みに行くのはどうかと思っていたんだよ、と返した。それでも幾つかのタイミングが重なり、二人でジョッキをぶつけ合うことが叶ったわけで。こういう偶然は、結局必然と呼ばれる類いのものになるのだろう。お互い脛が傷だらけだから、話せることは多い。
キョーコが最近、君と会えなくて拗ねていた、と言ってみた。もはや公認となりつつあるW不倫。あたしは何も気にしちゃいない。嫁が入院している間に、彼はしっかりと彼女に会っており、加えて合コンへ行き他の子にお持ち帰りされたとのこと。一体どれが彼女なんだよ、事後処理はきちんとしろよ、と形だけの説教をした。
柳くんの第一子は、どうやら女の子らしい。いくつか提示された名前の候補の内、可愛らしく賢そうでもある一つの名を、あたしは全力で推した。どのみち顔を見て決めるのだろうけど、もしその名になったのなら、彼女は間違いなく全うな人生を送る。何の根拠もないけれど、あたしはそう思う。いくらクズでどうしようもない男性の血をひいていたとしてもだ。まだ産まれてもいない彼女のことを、あたしは応援している。幸せになればいいじゃない、と。
ねえ、本当に子供が欲しかったの?と、あたしはいささか失礼とも取られる質問をした。実はそこまで、欲しくはなかったんだ、と柳くんは言った。それでも自分の子を産んでくれる女性のことを、彼は確かに愛しているし、そのことはしっかり伝わってくる。あたしが夫のことを愛していることと、ほぼほぼ同じことなのだと思う。
結婚してよかったよね、とあたしたちは言った。そう、本当に、心から、そう思っている。
それから話題は、最近破談になった共通の知り合いの男女のことになった。互いにいがみあい、そのうち2ちゃんねるの家庭板に書き込まれそうなくらいの騒ぎになっている、あの二人のこと。クズ既婚者たるあたしたちは、彼らの失敗に対し嘲笑を浴びせ、「もっと上手くやればよかったのに」なんて、人でなしのような感想を吐く。そう、籍さえ入れてしまえばこっちのものなのだ。多少の自由が減ったとしても、その範囲で遊べばいいだけの話。わずかばかりの忍耐があれば、そんなこと簡単だったのに。
自分が40歳になったときのことを考えたことがある、とあたしは聞いた。柳くんは、勿論だと答えた。彼はきっと、老いて皺が刻まれることにより、さらに魅力を増すのだろう。女はどうだろう、せめて湿度を保たないとね、なんてあたしは笑う。帰ったらクリームを全身に塗って、いち早く眠らないと……。
また性懲りもなく誘ってよ、と言って別れた。柳くんは、いい男だから。