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sakiblog

双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

「女はいいよな、仕事できなくても出世できるから」

そう言われて、返す言葉が無くて、缶コーヒーを投げつけたくなるのを必死に堪えながら、あたしはただ微笑んでいた。腹の中に渦巻いたどす黒い感情を抑えるには、とりあえず笑うしかなかったのだ。
ほとんどの女性の例に漏れず、あたしも論理的に言い返すことができない。即座に反論しようとすれば、どうしても感情的な言葉を吐いてしまう。そうなれば相手の思うツボなので、席に戻ってから、ゆっくりと対処法を考えることにした。
彼の気持ちも、分からないでもないのだ。女性登用の時代、大して努力をしていなくても、性別だけで上に行ける状況。実際、あたしも女性の上司に反感を覚えることがある。もっと仕事のできる男性は沢山いるのに、なぜ彼女なのだろう、と。
だから、知っている。同期の男性たちが、女性の出世に対して良い感情を持っていないことを。自覚している。そう思われていることを。
考え出すと、腹が立つのを通り越して落ち込んできたので、後輩の女の子にこのことを愚痴った。彼女は苦笑いをして、確かに本当のことですから言い返せませんね、と呟いた。わざわざ口に出すのはどうかと思いますけど、とも。そして、きちんと成果を出した上で出世すれば良いのだ、という慰めのような結論を二人で出し、ひとまず心は落ち着いた。

それから別の日、コウさんと話す機会があった。彼には色々と事情があり、うちの会社の風土上、恐らく出世することができない。サキちゃんが偉くなったら僕を部下につけてね、なんて冗談を言う人だ。そうは言っても、きちんと状況把握ができて、 綿密な計画を立てることができるので、あたしは絶大な信頼を置いている。
今のプロジェクトでも、またコウさんが周りの面倒を見ているのだろうな、と思って詳細を聞いてみたところ、ややこしいことになっていた。どうやら、グループの中で目立って功績を上げて、評判を高めようと必死な男性がいるらしい。それで言い合いになったから、手柄は彼に放り投げた、とのこと。
「コウさんだって、ポイントを上げたいんでしょう?なんて言われたよ」
ああ、口に出さなくてもいいことを言ってしまう人っていっぱい居るんだな、とあたしは大笑いした。コウさんも笑っていたが、それを言われたときは盛大に腸が煮え繰り返ったらしかった。
それで、その子主導で上手く行きそうなの、と聞くと、多分転覆するとのことだった。上司から褒められるどころか、嫌われるだろうね、と。同僚たちの意見を聞かず、自分の失敗はコウさんに押し付け、とにかく媚びを売る。あからさますぎて、上司もとっくに気づいているらしい。
猜疑心に火がつく一方だよね、と今後を憂えた後、自分も周りも楽しく仕事ができる環境がいいよね、等と理想を語り合った。その理想は、どうせほとんど現実にならないだろう。これが社会人というやつ、か。