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sakiblog

双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

ワンコールすら鳴らない内に電話に出たのでびっくりした。コウさんの方もあたしに連絡を取ろうとしていたらしく、それで携帯を手にとっていたとのことだった。あの妙なお茶会からそれなりの時間が経ち、互いに進捗状況が気になっていたのだろう。いいタイミングだった。
仕事の話から始まり、メインの話題であるコウさんの彼女について。形式上は別れたそうだが、変わらず連絡はとっているらしく、あたしはそれをダメ出しした。育ってしまったメンヘラからは全力で逃げろと言ったのに。それができないからこそ彼も悩んでいるわけだが。
まだコウさんは彼女のことを諦められていない。二人で良くしていこう、何とかできるはずだという希望を持っている。でもさ、いくら処方箋をだしたところで薬を飲むのは彼女自身なんだよ?本人が自らの異常性を自覚して、変えようと思わない限りどうしようもない。
俺のどこがダメなのかな、とコウさんは言った。怒らないところか?と聞いてきたので、あたしは少し考えて否定した。あたしの恋人も、怒らない人だから。けれど、怒られないことについて不満はない。彼が怒らないのではなく、怒ることができないと知っているから。メンヘラに取っ捕まるのは、総じてそのような男性だ。そしてつけこまれる。
話の流れから、あたしの家庭環境のことになり、コウさんは途中でブレーキをかけた。ごめん、聞きすぎた、と。あたしはそんなに不幸な境遇でも何でもないのだが、立ち入りすぎたと反省したらしい。そういえば、彼は今まで一度もそんな質問をしてこなかった。気が緩みすぎたと言うが、あたしにしてみれば彼を信頼するからこそ話したわけで、別に大したことではない。難しく考えすぎだよ、と言ってしまいそうになったが、止めた。
そう、コウさんは物事一つ一つを深く考える人だ。それだけに、周りもよく見えているし、相談される回数も多い。メンヘラの彼女に曲がった理論武装をぶつけられているせいで、考えなしに漏らした一言がどれだけ危険かということもわかっている。その上で、あたしは彼に爆弾を放り投げた。
我ながら性格が悪い。
あたしはとうとう、コウさんに浮気を打ち明けた。相手が彼の知る人物だということも言った。それが誰かと聞く彼に、聞けば君の負担が増えるだけだと告げた。知らないままの方がいいかもしれない、と。結果的に、彼は相手を特定してしまった。イエスノーで答えられる質問を彼がしたのだ。それからなぜか、自分の家庭環境の話を始めた辺り、相当に動揺していたのだろう。感情を整理するために、唐突な昔話を開始したことくらいすぐに察した。
コウさんに別の電話が入り、話は終わったが、彼は自分が嵌められたことには気づいているのだろう。嫌な爆弾を抱えてしまったが、それを引き受けたのは自分自身だということを。聞きたくなかった?でも忠告したよね、知れば負担が増えるって。それに、イエスノーの質問を浴びせたのはそちらだと。あたしはそんな抗弁ができるのだから。
いつまで同じことを繰り返すのだろう。歳を取る度に、やり直しは効かなくなるというのに。