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sakiblog

双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

 その夜バーで出会ったキムラさんは御年65歳、今も昔も多数の女性を相手にしてきたことが一目でわかる風貌だった。あたしはカツヤと一緒に来ていて、初めは三人で話していたのだが、もう一人ガクさんと名乗る男性が加わった。そんなわけで、年金受給者を二十代の若者たちで囲む会が出来上がった。

 キムラさんは大学を出てサラリーマンになった後、結婚して一子を儲け、浮気して離婚して脱サラし、現在に至るということだった。とんでもない額の金を女達に吸われたが、子供にはしっかりした援助をし、可愛い孫もいるのだという。やることやって、しっかり遊んできた人。普段、ストレートに人を褒めないマスターも、キムラさんは本当にカッコええわ、と言い切っていた。

 しかし、浮気して離婚云々のところはさすがに別で。それに対してのキムラさんの言い分は、浮気はしたけど嫁が一番好きなのだ、それを彼女がわかってくれなかった、というものだった。男はアホでスケベやから、浮気は仕方がないと豪語するキムラさんに、ガクさんは反論した。僕は、彼女ができたらその子一筋で、浮気したことないんですと。

 ガクさんはあたしより二歳年上で、さっぱりした顔立ちの好青年だった。日の沈む前から飲んでおり、現在六軒目なのだという。入ってきたときから大層酔っぱらっていたのだが、キムラさんとの会話でさらに加速したのか、思いっきりセックスの話を始めた。最近付き合いだした、性経験のまだ浅い彼女を、絶賛開発中らしい。

 それから身体の相性がどうのという話題になり、キムラさんが口を開いたので、若輩者達は押し黙った。彼曰く、一番相性が良かったのは別れた嫁さんだったらしい。離婚後も、数多の女性を抱いたとのことだが、元嫁に勝る人は現れなかったと。なのに、どうして浮気したのかなんていう、野暮なことは聞かなかった。

 各々すっかり出来上がった頃になってようやく、あたしとカツヤの関係を確認された。恋人ではないと言うと大層驚かれた。ガクさんには、既に四回くらいやってるように見える、と言われた。肯定したところでメリットがないので、笑って受け流した。それにしても、初対面の人にそう思われるほどの雰囲気を醸し出してしまっているのか、とあたしは反省した。

 あたしはキムラさんに、結婚して良かったか聞いた。彼は満面の笑みで、良かった、と言った。結婚というよりは、子供を作り、育て上げたことに対してのようだった。今は介護をしてくれる女性を募集しているが、誰も手を挙げてくれないのだと大笑いしていた。

 カツヤはあたしに、早く結婚すればいいのにと言った。まさにそれ絡みで喧嘩中のあたしは、結婚ねえ、と声のトーンを落とした。ちなみにカツヤは、独身でいる気満々である。あたしは連絡がこないサクのことを思った。マスターには、とっとと自分からメールしろと言われたが、どうしてもする気が起きなかった。