sakiblog

双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

 会社の先輩たちと飲みに行った後、物足りなさを感じてバーに足を向けた。あたしがその店に一人で行ったのは初めてで、いつもは男連れで来るのに、とマスターにからかわれた。ハーパーのソーダ割りを飲み、他の客の土産だという梅酒を飲み、ゲームに勝ってベルモットを飲み、隣の客がご馳走してくれたカンパリを飲み。もう一杯勧められたが、一人で帰らなければならないので断った。マスターには、サキちゃんは潰れる飲み方をしない子だと評されている。実際、一軒目と合わせて六杯の酒でも至って元気だ。あたしは酒がそこそこ強い部類に入るらしい。
 駅のホームで缶コーヒーを買い、タバコで焼けた喉を癒した。会社の人間の前では決して吸わないので、外だとつい吸いすぎてしまう。大あくびを一つ二つ、昼まで眠れる土曜日はいいものだと週休二日に感謝し、家路につく。酒に強いといっても眠いものは眠い。
 カツヤは微熱があると言い、メールの返信は21時で途絶えた。昨日やけに体温が高いと感じたのだが、気付いてやれなかった。彼は身体がそんなに強くないことを知っていたのに、と多少の罪悪感を持った。でもそれだけだ。
 正社員として平日は働き、金曜日に飲んで土日に寝る。渇望していた未来を今手に入れている。優しい恋人と暖かい家もある。左腕の傷はここ数年増えていない。冬になればボーナスが入り、母に食器洗い機でも買ってやろうかと思っている。それくらいの親孝行もできる。今後身体を崩したとしても、命綱は確保できている。
 なのに突然、心底下らない、しょうもないと思う時があって、19歳の自分が髪に火をつけようとする。おいおい、もう出てくるなよ、真っ当な生活をさせてくれよ。一番望んでいたつまらない大人になれたというのに。
 彼はきっと、深夜にうなされて目を覚ますのだろう。もしもあたしが傍にいたならば、彼は力のない笑顔であたしの頬を撫でるのだろう。
 下らない、つまらない。酒に飲まれない意志はあっても、堕ちて溺れて流されてしまった、あの海で。