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sakiblog

双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

 今夜電話してもいいかとお伺いを立てたのは昼休みのときで、それから一向に返事がないから、自分でもメールをしたことを忘れていた。構わないという返信がきたのは23時頃。そういえば、フミヤは夜行性だった。

 愚痴半分の近況報告と、簡単な思い出話。どんな話題でも声のトーンが一切変わらないフミヤ。彼は一度話し出すと長いということも忘れていて、電話をしたいと言ったのはあたしの方なのに、眠気に負けてもう切ってもいいかと言いそうになっていた。目が覚めたのは恋愛の話題になったから。彼は今までたったの一度も、女の子と付き合ったことがなかった。

 

「このままずっと一人で過ごすのって寂しいよね、嫌だなあ」

 

 寂しそうにも嫌そうにも聞こえなかったのだが、心底そう思っているのだろう。たぶん。声に感情が乗らないというのは、損なことの方が多かろうに、とあたしはフミヤを憐れんだ。交際経験がないのはそれも関係しているだろう。その他にも、私服のセンスが壊滅的だったり、会話のテンポが少々ずれていたりと、思い当たる節はいくつもあった。それでも、容姿は悪くないし、肩書もある。君の所にはいい嫁さんが来そうなのに……とあたしは呟いた。

 そしてフミヤは、高校まで男子校だったこと、大学の学部も男女比率が極端だったことを明かし、現在も出会いがないのだと説明した。境遇のせいにするのかと思いきや、自分の消極的姿勢も挙げた辺り、彼は真面目に物事を考えている。彼女ができない原因も対処法もすっかり分析済みで、それでいて一歩が踏み出せないだけの人だった。

 

「合コンとかは違う気がするんだよね。職場っていっても、若い人全然いないし。あ、でも来年新しく入ってくるかもしれないよね」

「まあ、そうやね」

「あ、けどそれって、山札から一枚ひくようなものだよね」

 

 あたしはその例えに盛大に笑った。時刻は深夜1時くらいになっていた。