sakiblog

双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

 土曜日は雨だった。サクに会うなり、あたしはそのことに不平を言い、彼は雨男でごめんと謝った。久しぶりの大学。阪急電鉄。道中、馴染みの風景に出くわす度に、あたしは短いエピソードを打ち明けていった。至る所に、ひどい思い出がある。
 その日は学園祭三日目。出店の宣伝に立つ大学生たちの剣幕に、サクは圧倒されていた。あたしは他の大学の様子を知らないが、学園祭といえば四方から声をかけられ、不味い焼きそばやらフランクフルトやらを勧められるものだと思っている。軽快な喋り口、よくわからない扮装。自分もそれをしていたので、声をかけられることに驚きはない。しかし彼は、まず大学生というものを知らないので、イベントで五割増しになっている彼らのテンションが理解できないでいた。こうなることは重々承知だったので、あたしは彼の手をひき、道を塞ぐ大学生たちをすり抜けていった。スルースキルなら任せてくれ。とりあえず、地理を把握したいと彼が言うので、勝手知ったる母校を一周した。喫煙所の数以外、何も変わっちゃいない。久しぶりといっても、あたしが卒業したのは一年半前だ。
 小腹がすいたので、適当に焼き鳥とポップコーンを買い、野外ステージの席に腰を下ろした。あたしの後輩にあたる子たち(面識はない)が、可哀想なくらい下手くそな演奏をしていた。サクは絶えず周りを見渡していて、その様子が面白かった。それが見たくて連れ出したようなものだった。彼に学園祭の思い出がないのか聞くと、他校生が乗り込んできて喧嘩しているのを横目で見ていたくらいだと言った。その時初めて出身校を知ったのだが、地元で有名なスポーツ校だった。彼自身は普通科、まるで運動はできない。特待生との確執が大きかったのだろう、色々と大変だったよ、と彼は苦笑した。食べ物は、思ったより不味くはなかった。
 雨が強くなってきたので、割と早めに三宮へ戻り、夜はガストへ行った。お互い正社員になるまでは食事代をケチらなければならない。サクは疲れていた。朝から集まったせいもあるが、慣れない大学という場でストレスを受けたのだろう。食べ終わってしばらくすると、口数が少なくなり、しきりに目薬をさしはじめた。眠たい?帰る?と尋ねると、サキちゃんに甘えたい、と17歳の高校生のような顔をするので、カラオケに引っ張っていき、膝枕をしてやった。甘やかすとさらにダメ男になるのはわかっている。またやってしまったなあ、という心境である。なので、相手が媚態を晒したのなら、きちんと応えるのが礼儀だという言い訳をつけた。あたしも結局、そういう女だ。