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双極性障害Ⅱ型。只今リハビリ出勤中。まずはカテゴリから「双極性障害と診断されるまで」を読まれることをおすすめします。

 こんな住宅街じゃろくにタバコを吸える場所がない。公園には幼児が集っているし、近所の奥さまたちの目もある。あたしは、そこそこの大学を出た真面目なお嬢さんで通っているから、コーヒーの缶を灰皿にし、人の来ないスポットを求めてさ迷い歩く。どの時間帯でも、犬の散歩をしている人がいる。落ち着ける所なんてひとつもない。
 今月の給料は交際費に消えた。低所得のあたしが、あれだけ飲み会に行けば当然そうなる。給料日前にあと一つ、職場の集まりが予定されていて、それまでは何としてでも財布を守らなければならない。あと二週間ちょっと、昼食は全て弁当、秋服なんて絶対に買わない。
 金曜日はナオキさんを呼び出した。前日に連絡を入れたのにも関わらず、彼は快く応じてくれた。週末の大阪、思った以上に人は多かった。空いている店があるのか不安だったが、先月に他の仲間を交じえて行った店へ向かってみた。地下にあるせいだろうか、駅近くにも関わらず、楽に入ることができた。ビールを頼み、まずは仕事の話をした。真っ直ぐ本題に入ることが嫌だったのではなく、純粋にそういう話がしたかったのだ。彼と会うのは久しぶりではなかったが、二人きりというのは珍しいことだった。あたしが二本目のタバコに火をつけたとき、今の彼氏のためにやめたんじゃなかったの、と彼はわざとらしく言った。今回の相談内容は、あらかじめ伝えてあった。
 あたしたちは、お互いに浮気者だという協定を結んでいるので、包み隠すことは何一つない。浮気相手のスペック、顛末、そして現在に至るまで、直接的な言葉を使い説明した。最後までしていないのなら、浮気じゃなくて純愛だよ。ナオキさんはは大真面目にそう言った。この前読んだ女性誌には、二人で食事をしたり、手をつないだりした時点で浮気だと書いてあった。それはもちろん女性の意見だけれど、男性でも、こう言い切る人は少ないのではないだろうか。一体どこからが浮気なのか。今回は、そんな詰まらない話をしにきたのではないので、そのことには突っ込まなかった。あたしは、今の恋人と浮気相手のどちらを選ぶべきか、それを聞きたかったのだ。
 あたしと恋人とナオキさん、そしてナオキさんの彼女であるマナちゃんは、何度か旅行に行った仲だ。男女の四人組が、うまく二手に分かれたということで、このグループの付き合いはかなり上手くいっている。ただ、どちらかが破局したら、四人で会うことはなくなるだろう。ナオキさんもそれを危惧すると思っていたから、彼が恋人を味方しなかったことには驚いた。もし別れたとしても、俺とサキちゃんの付き合いはなくならないからね。彼は涼しい顔で言った。あたしは正直、彼に浮気相手とのことを諦めさせてほしかったのだ。恋人と別れるのは労力が要る、四人の関係も壊れてしまう、スペック的にも恋人の方が上だからそいつは切れ、そう言って欲しかった。そういう気持ちが顔に出ていたのだろう。相談する相手を間違えたんだよ、と言われてしまった。俺はサキちゃんの味方。そういうゴタゴタが起きたことは、ただ面白くて仕方がない、と。
 ナオキさんとマナちゃんのことを、あたしは詳しく聞いたことがなかった。マナちゃんが告白し、断る理由がないからという理由でナオキさんは付き合い始めたのだが、それにしては長く続いていた。二人の性格を、あたしはよく知っている。話の内容はほとんどが予想通りだったが、マナちゃんの豹変については少し恐怖を感じた。まさかそこまでだとは思っていなかったのだ。ナオキさんは、別れる理由がないから別れないのだと言った。そして、あたしの浮気を羨ましがった。そのままキープして、楽しめばいい。だって、サキちゃんは自分のことが一番好きだろう?実にその通りだった。